とむとむダイアリー

オタクの何気ない日常エッセイ。

タグ:読書

口に関するアンケートってなに?

口に関するアンケート
背筋
ポプラ社
2024-09-04



今回は『近畿地方のある場所について』の作者・背筋氏による3作目の作品『口に関するアンケート』について紹介させていただきます!

本作のタイトルを見た時の自分の感想がまさに本記事の1文です。ただ、その意味不明なタイトルが逆に興味をそそる。しかも、本作はあの背筋氏の作品。ホラー小説好きとしては読まずにはいられないッッ!

そう思って本作を読み始めたのも束の間、突然始まる大学生グループの1人語り。頭の中「???」の状態で読み進めて行くと、どうやらグループで肝試しに行って、その時の恐怖体験を1人ずつ語っていくのが大まかなあらすじ。この語り部によって新事実が出てきたり、語る内容に差異があったりするのは、芥川龍之介氏の『藪の中』感を彷彿とさせる。

どちらかと言えばミステリー寄りな印象ですが、ちゃんとホラー要素もあるので楽しむことができました。

「肝心の口に関するアンケートは!?」と思った方、是非ネタバレ厳禁で読むことをオススメします。是非自分と同じ恐怖と衝撃を味わってくださいませ。

では、本記事を最後までお読みいただきありがとうございました。

最近話題になっているホラー小説『近畿地方のある場所について』を皆さん知っているでしょうか?カクヨム発のモキュメンタリーホラー小説で、「怖い!」「1人で読まなければよかった」とネットで話題になっています。

ホラー小説好きとして、一体どれほどの怖さなのかとても気になる…!そして先日、ついに本作を購入することができました!この記事では、本作の感想をまとめさせていただきます!ネタバレなしなので、気になった方は是非お手に取ってみてくださいませ!

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情報をお持ちの方はご連絡ください
近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきました。


あらすじ

著者・背筋氏は、友人の編集者・小沢氏からオカルト誌のライティングを依頼されます。それは、近畿地方のある場所「●●●●●」にまつわる話。「ある場所」とは厳密に言うと「複数地域にまたがったある一帯」を指しており、その場所では数多くの怪奇現象が報告されていました。

背筋氏と小沢氏は、その場所にまつわる怪奇現象を収集・考察していきますが、調べているうちに小沢氏が消息を絶ってしまいます。

少女行方不明事件の週刊誌、読者からの手紙、インターネット匿名掲示板等、一見バラバラに思えた怪奇現象はすべてそのある場所に繋がっていき…

どんな人にオススメ?

自分はホラー小説が好きなのですが、本作は今まで読んだ中でも群を抜いて怖い!どのぐらい怖いかというと「しばらく夜道を歩くのが怖くなる」レベルです。

その怖さを際立たせているのが、圧倒的リアリティ感。実際、自分は読んでいてどこまでがフィクションなのか分からなくなっていました。全部真実なのではないか?そう思わせるほどのリアリティが本作にはあります。

映画『パラノーマル・アクティビティ』芹沢 央『火のないところに煙は』のような、リアリティのあるホラーが好きな方に超オススメしたい作品ですね…!

モキュメンタリーホラー

本作は少女失踪事件の報道誌や読者からの手紙、インタビューや匿名掲示板など、様々な媒体から「ある場所」についての怪異がまとめられています。どれも不気味な内容で、実話と思うぐらいリアリティあるものばかり。

具体的な場所が明言されていないからこそ「どこにあるんだろう?」「実在する場所・モデルがあるのか?」と、もっと知りたい!という好奇心が刺激され、ページをめくる手が止まりませんでした。

実際自分は読み終わった後にその場所が実在するのかとネットで調べまくっていました。いくつかそれらしき場所がヒットしたりするので、1回で2度楽しめる作品でしたね…!

袋とじ

実は本作品、巻末に「取材資料」として袋とじがあります。読み終わった時点で既に恐怖は限界突破しているのに、さらなる恐怖要素を追加している辺り、作者様は読者を怖がらせることに余念がありませんね…!

正直、自分はこの袋とじを開けたのを後悔しました(褒め言葉)
この袋とじを開けるかどうかは、読者の皆様の判断にお任せ致します…

最後に

本作はWEB小説としても無料公開されていますが、個人的には紙の方が読みやすかったのと、袋とじがあったことから、紙で読むのをオススメしたいですね…!

文章だけでこんなに怖い本作ですが、なんと2023年11月27日発売の電撃大王1月号にてコミカライズ版が始まっております。作画は碓井ツカサ氏。漫画内では少女失踪事件の様子が描かれていますが、なんとも不気味なテイストになっていて、漫画版もとても気になります…!



また、Youtubeでは朗読動画も上がっているようです!


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”怪談”っていいよね!

自分はホラー小説好きなんですが、その中でも好きなジャンルが「怪談」なんですよね…!地元の怪談や誰かが体験した恐怖体験のリアリティが醍醐味だと思います…!

今回怪談蒐集家であり作者の中山市郎氏が、退魔師から聞いた恐怖体験が綴られた作品『なまなりさん(角川ホラー文庫)』を読んだ感想を述べていきたいと思います!

作品紹介・あらすじ

なまなりさん (角川ホラー文庫)
中山 市朗
KADOKAWA
2022-12-22





あらすじ
現代に、祟りは存在するのだろうか――? 驚異の呪詛怪談。
怪異蒐集家・中山市朗が聞き取った幻の長篇実話が新装版で登場。後日談と、書き下ろし短篇を収録。沖縄で退魔師の修行を積んだというプロデューサーの伊東礼二。彼の仕事仲間の健治が、沙代子という女性と婚約をした。しかし沙代子は、妖艶な双子姉妹による執拗ないじめにより自死へと追いやられる。彼女の死後、双子姉妹の周囲で奇妙な事件が続発するようになるが、それにとどまらず、被害はやがて双子の実家へと移っていく――。伊東氏の目の前で起こる信じがたい怪異と事実……。体験者本人によって、二日間にわたり語られた生々しい体験記。
出典:なまなりさん(角川ホラー文庫)

レビュー

本作のタイトルである「なまなりさん」ってなかなか耳馴染みのない言葉ですよね…!どうやら新潟県では「怨霊」「生き霊」のことを「なまなりさん」と呼んでいるようです。

そして、主なストーリーは退魔師・伊藤氏が語る恐怖体験となっております。

多くのホラー小説や怪談って、一人称視点なことが多いけど本作の特徴は作者伊藤氏から聞いた体験をインタビュー・ルポ形式で綴られている珍しい文章で、実話なのかどうか真偽はさておきリアリティのある怖さになっていました…!

また、そういう形式の文章だからか、淡々と起きた出来事・事実が語られており個人的にめっちゃ読みやすかったです!!

ここからは内容の話になります。
この作品に登場する双子の島本姉妹。一人の女性を自死にまで追い込む陰湿ないじめをしている彼女達に降りかかる災難を最初は「自業自得」だと思っていたけど、災難がエスカレートしていき次第には彼女達の一家までジワリジワリと追い詰められていく様子が怖かったですね…!

あと、個人的には自死した女性・紗代子が自分の命を捨ててまで姉妹に呪いをかけようとする執念のある行動も読んでいてゾワッとしました…!

スプラッターやグロ要素は比較的少ない方(一応は”ある”)なので、そういった要素が苦手な方でも読みやすいと思います!ただ、序盤の紗代子へのいじめの描写が読んでいて心苦しくなりましたね…!

どんな人にオススメ?

・ホラー小説が好きな方
・怪談が好きな方
・リアリティのある怖い話が好きな方

あとがき

本作の紹介は以上となります!ちなみに本作、話を聞いた・取り扱う人伝播する系の要素もあって、作中の話では、伊藤氏もこの話を映画化しようとした所で次々に災難が降りかかったらしいです…!
真偽はさておき伝播系の怖い話が苦手な方は避けた方がいいかもしれません…!

自分もこの記事書いてるとき少し肩が痛かったんですが、ただの肩こりだと信じたいですね…!
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!!

皆さんこんばんわ!とむとむです。今日は最近読んだ小説
著:芹沢 央『火のないところに煙は』|新潮文庫 の感想・解説についてお話ししたいと思います!

2019年本屋大賞にノミネートした当作品、読む前から期待は高かったのですが、めちゃくちゃ面白く、怖かったです…!なるべくネタバレは避けるので、気になった方は是非読んでみてください!

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あらすじ

「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の〈私〉は驚愕する。心に封印し続けた悲劇は、まさにその地で起こったのだ。私は迷いつつも、真実を求めて執筆するが……。評判の占い師、悪夢が憑く家、鏡に映る見知らぬ子。怪異が怪異を呼びながら、謎と恐怖が絡み合い、直視できない真相へとひた走る。読み終えたとき、それはもはや他人ごとではない。ミステリと実話怪談の奇跡的融合。
                       『火のないところに煙は』裏表紙引用

虚構と現実の狭間

当作品の特徴は「フェイク・ドキュメンタリー(モキュメンタリー)」型の怪談小説であるということ。

「フェイク・ドキュメンタリー」というのは、嘘(フィクション)を現実(ドキュメンタリー)のように描いた表現で作中では、作者である〈私〉芹沢央さんを語り手にすることで、作中の怪異現象が”実話”のように思わせる手法がとられています。

作中に登場する〈私〉が、第1話目の「染み」の投稿をきっかけに、怪談話が彼女のもとに舞い込んでくるのですが、それぞれの物語内の虚構と現実が入り混じった描き方で、読み進める内に「どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか?」という不思議な感覚に囚われました…!

ミステリー×ホラー

当作品は雑誌掲載された5話+単行本化書下ろしの合計6話構成になっております!以下がそれぞれのタイトルです。

第1話「染み」
第2話「お祓いを頼む女」
第3話「妄言」
第4話「助けてって言ったのに」
第5話「誰かの怪異」
最終話「禁忌」


そして、それぞれの物語の前半は「体験した怪異・怪現象」のホラーパート。そして、その内容を踏まえて「なぜその現象が起きたのか?」のミステリーパートに分かれています。

著者本人と思わせる〈私〉が作中で登場し、〈私〉視点で物語が進行するため、そのリアリティは圧倒的。 ホラーパートに関してはとても怖い描写がある訳ではなく、けど逆にそれがリアリティを引き立たせており「実際にあったんじゃないか…?」という点がより怖さを増幅させているんですよね…!

そして「怪現象がどうして起きたのか?」という謎解きは、ミステリー小説を読んでいるような感覚でした。 だけど、この作品は「謎が残る」描写が多いんですよね。

普通のミステリー小説なら、完全に謎を解いてしまうけど、この作品は「たぶんこうだろう」という真実に近い推測はあるけど、謎がすべて解消される訳では無いんです。

不完全燃焼感はあるけど、これこそ「ミステリ×実話怪談」の特権だと思うんですよね。 科学現象だけでは説明できないオカルトだからこそ怪異の正体を完全に解明することはできない。 この謎が残されたモヤモヤ感も、当作品の恐怖感を担っていると感じました…!

そして、5話までの物語の積み重ねが最終話に繋がってきて、読み終える頃には面白さからの興奮なのか怖さからなのか分からない震えが出ていました。帯に書かれている「震えがやまない、読み終えてからが恐怖」というのは誇大広告ではありません…!

まとめ

ホラー小説にミステリーとリアリティを組み合わせた物語の構成から、普段1冊読み終わるまで数日かかる自分でも、この作品はすぐに読み終わってしまいました。

「次はどうなるの!?」と一気に読み進めるのですが、そんな読者へのトラップのように大どんでん返しが最終話で待ち構えています。最後まで読んだら、きっと読む前には戻れない。読み終わってからがまさに恐怖です。

さらに、書評の部分も怖い要素があり、最初から最後までホラーたっぷりの当作品。ホラー好きな方、ミステリー好きな方にオススメの作品です! 最後に、裏表紙にあるこの赤い染みは一体なんなんでしょうか…何か書かれているような…

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皆さんこんばんわ!とむとむでござる~!
今日は米澤穂信著『ボトルネック』の感想についてお話ししたいと思います~!!

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作品紹介

亡くなった恋人を追悼するため、東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われれるように弾劾から墜落した…はずだった。ところが気が付くと見慣れた金沢の街にいる。 不可解な思いで自宅に戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。 もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。                            「ボトルネック」背表紙より引用

あらすじ

主人公「リョウ」は自殺した恋人の「ノゾミ」を弔うために、彼女が転落死した東尋坊を訪れる。 リョウの家庭は植物状態の兄、互いに嫌悪しあっている父と母と複雑な環境で、ノゾミの死の2年後にようやく弔いに訪れることができた。

しかし、到着した直後、彼に兄の死の知らせが届き、恋人の死の感傷に浸る間もなく、とんぼ返りの帰宅を余儀なくされる。 リョウは帰宅前にノゾミが転落したであろう場所を見つけ、手向けとして花を贈るが、同時に強風が吹き東尋坊の断崖から転落してしまう。

死を覚悟したリョウだったが、目を覚ますと金沢の街に戻っていると気づく。不可解な思いで自宅に戻ると、見知らぬ「姉」サキと名乗る人物が現れ、この世界がパラレルワールドであると知る。

さらに、この世界では、兄は生きており、両親の関係も良好。更に、死んだはずの恋人ノゾミが幸せそうに暮らしているなど、自身のいる世界よりも皆が幸せに暮らしていることに気づき…

感想

①パラレルワールド
まず序盤から主人公が崖から転落し、死んだと思ったらパラレルワールドに流れ着いたという展開。転生系とかにありがち展開だけど、この作品はひたすら重い。

この「リョウ」という主人公も、自分に臆病で、世界に絶望している人物なんですよね。そして、パラレルワールドの経験を通して、自分に自信を持ったり、何か変わるきっかけが掴めたりするのかな~と思いながら読んでいると、そんな事はない。

自分が生まれなかった世界は、自身の世界よりも皆が幸せという残酷な結果をひたすら突きつけられていくという酷な展開。 作中で度々「黒々とした雲」や「灰色の空」と暗い空模様が描かれていたけど、この空模様通りに内容もなかなか暗い陰鬱な印象を受けました。

②ミステリー
パラレルワールドだけでも十分面白いけど、それに「ミステリー」要素が加わったのが当作の面白い所。 「姉」のサキから出される、サキの世界とリョウの世界のどこが違っているのを調べる「間違い探し」。

なぜ、2つの世界は違ってしまったのか?という理由が明かされていくのも面白い所です。 個人的に見所なのが、恋人のノゾミの性格がリョウの世界では「感情の起伏が乏しく、無気力そうな性格」だったのに対し、サキの世界では「天真爛漫かつ傍若無人」と、正反対の性格をしている所。

けど、コレが実は物語の伏線になっているんですよね…! 特に、リョウとサキが東尋坊に向かう中の会話シーンは、今までの謎が紐解かれていく感じがあってめちゃくちゃ面白いです。その中で、ノゾミは本当に自殺だったのか?という新たな謎もまた生まれ始めて…!

考察

以下ネタバレ注意!!

ラストのリョウの結末なんですが「自殺説」と「生存説」、両方があり得そうな結末になっています。 けど、自分的には「自殺説」が濃厚なんじゃないかとも思っているんですが、まずはキーワードになる作品のタイトルの解説から。

まずこの作品のタイトル「ボトルネック」の意味なんですが、作中ではこのように解説されています。
【ボトルネック】瓶の首は細くなっていて、水の流れを妨げる。そこから、システム全体の効率を上げる場合の妨げとなる部分のことをボトルネックと呼ぶ。全体の向上のためには、まずボトルネックを排除しなければならない。
ノゾミの死の真相や、なぜ2つの世界で性格が違っているのか、また「間違い探し」の原因に気づき、自身こそが「ボトルネック」だったと知り絶望するリョウ。

すべてに絶望した彼が「もう死にたい」と思った矢先、パラレルワールドから現実世界へ呼び戻されます。

サキの世界を見せられた上で、現実世界に戻ってきたリョウは、「ボトルネックを排除するため」自殺を覚悟しますが、サキと思われる女性からの着信で、ほんの少しだけ生きる希望を抱きます。

しかし、その直後母からの「二度と帰ってこなくて構いません」という非情なメールが届き、このメールを見てリョウがうっすらと笑う所で物語の幕は閉じます。

「生きる希望」を持った矢先に、母からの非情なメール。おそらく、このメールでリョウの「生きる希望」は打ち砕かれて、諦めの笑みを浮かべたのではないかなぁ。と考察しています。

まとめ

最後まで陰鬱とした空気の中幕を閉じた当作。主人公のリョウは高校生。このぐらいの年って「自分じゃなければ」とか、「自分なんかいなければよかった」って思ってしまう時が度々ある時期ですよね。

漫画やアニメとかでも、「自分なんかいなければよかった。」と思う主人公は多いけど、彼らって最終的には立ち直ることが多い。

けど、この作品のリョウは最後の最後まで「自分」に対する希望を持てなかったという珍しい展開で、特に最後の結末は予想を見事に裏切られました。

ミステリー要素もめちゃくちゃ面白く、「間違い探しの」答えや理由をすぐには出さないことで、リョウと同じく「想像」し楽しむことができます。

ミステリーの内容面白いなと思っていたら、作者の米澤穂信先生は「氷菓(古典部シリーズ)」でも有名でしたね!(まだ読んでない)

今回の「ボトルネック」が良いとっかかりになった気がするので、このまま「氷菓」も見てみたいと思います~!ここまでお読み頂き、ありがとうございました!!

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