仕事を終えPC画面左下のWindowsマークをクリックする。
電源ボタンにカーソルを合わせると、シャットダウンや再起動の項目が並んでいる。
シャットダウンしたいのは自分の方だよ、と心の中で悪態をつきつつ、PCの電源を落とした。
伸びをしながら立ち上がり、ふと周りを見渡すと、センター内には自分以外に誰もいないことに気づいた。
誰もいないセンター。午前中の慌ただしさや喧騒が嘘のように静まっており、空気清浄機のごうごうという稼働音だけが響き渡っていた。
普通なら「こんな時間まで残業かよ」って思いたくなるが、センターに1人だけ残っているのは不思議と高揚感を覚える。
朝1番に教室に着いた時、皆が帰った後に忘れ物を取りに行った時のような、あのような感覚だ。
「疲れたー!」
思わず大きな独り言が出て自分でも驚いてしまったが、この時間なら聞いている人は誰もいない。その後も帰りの準備をしながら自分は独り愚痴大会を開いていた。
帰り支度を終え、退勤を押す。残業は長いが、その分ちゃんと残業代が出るだけマシだろう。
今まで23時を過ぎても電気が点いているビルを見ては「大変だな〜」と思っていたが、まさか自分が同じ立場になるとは思ってもなかった。
時計を見ると、時刻は23時を過ぎていた。今からモノレールで帰るとなると、最短でも帰りは日付を跨いでいる。帰ったとしてもご飯を食べて寝る時間しか残されていない。
少しでも早く帰ろう、とセンター出口のカードリーダーにICカードをかざす。その時、ピピピとエラー音が鳴った。
この会社の入退室のシステムは厄介で、1度引っかかるとどこも出入りできなくなる。
まぁ"誰か"いれば一緒に出ることができるので問題ないのだが。
誰か?
そうだった。今このセンターには自分以外誰もいない。ということは、自力でここから出ることは不可能だ。
幸い、このビルには常駐の警備員がいる。その人に知らせることが出来ればなんとかなるかもしれない。警備室は別の階だが、スマホで調べれば連絡先ぐらい出てくるでろう。
ところがどっこい、ビルの名前を検索しても、ビル自体の電話番号や警備会社の電話番号は分からなかった。この時点で終電まで残り20分だ。
これ、詰みなのでは?
嫌な考えが頭を過ぎる。
救護室のベッドで眠り朝まで過ごし、そのまま出勤するという最悪なシナリオが思い浮かんでしまった。
なんとか帰れる方法はないか、とセンター内を歩き回るも、やはりどこからも出られそうにない。次でダメなら諦めることを決意し、自分は最後の手段に出た。
「すいませーん!」
最後の手段、それはシステム室であった。
以前、システムの人は夜も常駐しているという話を聞いたことがあったので、もし滞在していれば彼に頼んで出られるかもしれない。
同じフロア内にシステム室があったのは不幸中の幸いだろう。
諦め半分だったその時、扉の向こうから足音が聞こえた。扉が開くと、システム担当者が不思議な顔をして自分を見ている。
それはそうだ。システムの人を呼ぶのは何か不具合が起きた時だし、こんな深夜に呼べば「こんな夜更けに不具合かよ!」と思うのも当然だ。
事情を説明すると、彼は快く協力をしてくれて、自分はなんとかビルから脱出し終電に間に合わせることが出来た。
正直、なぜエラーが起きたのか分からない。だが、もしシステムの人が不在だったら確実に詰んでいただろう。
これからは残業があっても人がいる内に帰ろう、そう決意するのだった。
電源ボタンにカーソルを合わせると、シャットダウンや再起動の項目が並んでいる。
シャットダウンしたいのは自分の方だよ、と心の中で悪態をつきつつ、PCの電源を落とした。
伸びをしながら立ち上がり、ふと周りを見渡すと、センター内には自分以外に誰もいないことに気づいた。
誰もいないセンター。午前中の慌ただしさや喧騒が嘘のように静まっており、空気清浄機のごうごうという稼働音だけが響き渡っていた。
普通なら「こんな時間まで残業かよ」って思いたくなるが、センターに1人だけ残っているのは不思議と高揚感を覚える。
朝1番に教室に着いた時、皆が帰った後に忘れ物を取りに行った時のような、あのような感覚だ。
「疲れたー!」
思わず大きな独り言が出て自分でも驚いてしまったが、この時間なら聞いている人は誰もいない。その後も帰りの準備をしながら自分は独り愚痴大会を開いていた。
帰り支度を終え、退勤を押す。残業は長いが、その分ちゃんと残業代が出るだけマシだろう。
今まで23時を過ぎても電気が点いているビルを見ては「大変だな〜」と思っていたが、まさか自分が同じ立場になるとは思ってもなかった。
時計を見ると、時刻は23時を過ぎていた。今からモノレールで帰るとなると、最短でも帰りは日付を跨いでいる。帰ったとしてもご飯を食べて寝る時間しか残されていない。
少しでも早く帰ろう、とセンター出口のカードリーダーにICカードをかざす。その時、ピピピとエラー音が鳴った。
この会社の入退室のシステムは厄介で、1度引っかかるとどこも出入りできなくなる。
まぁ"誰か"いれば一緒に出ることができるので問題ないのだが。
誰か?
そうだった。今このセンターには自分以外誰もいない。ということは、自力でここから出ることは不可能だ。
幸い、このビルには常駐の警備員がいる。その人に知らせることが出来ればなんとかなるかもしれない。警備室は別の階だが、スマホで調べれば連絡先ぐらい出てくるでろう。
ところがどっこい、ビルの名前を検索しても、ビル自体の電話番号や警備会社の電話番号は分からなかった。この時点で終電まで残り20分だ。
これ、詰みなのでは?
嫌な考えが頭を過ぎる。
救護室のベッドで眠り朝まで過ごし、そのまま出勤するという最悪なシナリオが思い浮かんでしまった。
なんとか帰れる方法はないか、とセンター内を歩き回るも、やはりどこからも出られそうにない。次でダメなら諦めることを決意し、自分は最後の手段に出た。
「すいませーん!」
最後の手段、それはシステム室であった。
以前、システムの人は夜も常駐しているという話を聞いたことがあったので、もし滞在していれば彼に頼んで出られるかもしれない。
同じフロア内にシステム室があったのは不幸中の幸いだろう。
諦め半分だったその時、扉の向こうから足音が聞こえた。扉が開くと、システム担当者が不思議な顔をして自分を見ている。
それはそうだ。システムの人を呼ぶのは何か不具合が起きた時だし、こんな深夜に呼べば「こんな夜更けに不具合かよ!」と思うのも当然だ。
事情を説明すると、彼は快く協力をしてくれて、自分はなんとかビルから脱出し終電に間に合わせることが出来た。
正直、なぜエラーが起きたのか分からない。だが、もしシステムの人が不在だったら確実に詰んでいただろう。
これからは残業があっても人がいる内に帰ろう、そう決意するのだった。