皆さんこんばんわ!とむとむです。今日は最近読んだ小説
著:芹沢 央『火のないところに煙は』|新潮文庫 の感想・解説についてお話ししたいと思います!

2019年本屋大賞にノミネートした当作品、読む前から期待は高かったのですが、めちゃくちゃ面白く、怖かったです…!なるべくネタバレは避けるので、気になった方は是非読んでみてください!

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あらすじ

「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の〈私〉は驚愕する。心に封印し続けた悲劇は、まさにその地で起こったのだ。私は迷いつつも、真実を求めて執筆するが……。評判の占い師、悪夢が憑く家、鏡に映る見知らぬ子。怪異が怪異を呼びながら、謎と恐怖が絡み合い、直視できない真相へとひた走る。読み終えたとき、それはもはや他人ごとではない。ミステリと実話怪談の奇跡的融合。
                       『火のないところに煙は』裏表紙引用

虚構と現実の狭間

当作品の特徴は「フェイク・ドキュメンタリー(モキュメンタリー)」型の怪談小説であるということ。

「フェイク・ドキュメンタリー」というのは、嘘(フィクション)を現実(ドキュメンタリー)のように描いた表現で作中では、作者である〈私〉芹沢央さんを語り手にすることで、作中の怪異現象が”実話”のように思わせる手法がとられています。

作中に登場する〈私〉が、第1話目の「染み」の投稿をきっかけに、怪談話が彼女のもとに舞い込んでくるのですが、それぞれの物語内の虚構と現実が入り混じった描き方で、読み進める内に「どこまでが本当で、どこまでが嘘なのか?」という不思議な感覚に囚われました…!

ミステリー×ホラー

当作品は雑誌掲載された5話+単行本化書下ろしの合計6話構成になっております!以下がそれぞれのタイトルです。

第1話「染み」
第2話「お祓いを頼む女」
第3話「妄言」
第4話「助けてって言ったのに」
第5話「誰かの怪異」
最終話「禁忌」


そして、それぞれの物語の前半は「体験した怪異・怪現象」のホラーパート。そして、その内容を踏まえて「なぜその現象が起きたのか?」のミステリーパートに分かれています。

著者本人と思わせる〈私〉が作中で登場し、〈私〉視点で物語が進行するため、そのリアリティは圧倒的。 ホラーパートに関してはとても怖い描写がある訳ではなく、けど逆にそれがリアリティを引き立たせており「実際にあったんじゃないか…?」という点がより怖さを増幅させているんですよね…!

そして「怪現象がどうして起きたのか?」という謎解きは、ミステリー小説を読んでいるような感覚でした。 だけど、この作品は「謎が残る」描写が多いんですよね。

普通のミステリー小説なら、完全に謎を解いてしまうけど、この作品は「たぶんこうだろう」という真実に近い推測はあるけど、謎がすべて解消される訳では無いんです。

不完全燃焼感はあるけど、これこそ「ミステリ×実話怪談」の特権だと思うんですよね。 科学現象だけでは説明できないオカルトだからこそ怪異の正体を完全に解明することはできない。 この謎が残されたモヤモヤ感も、当作品の恐怖感を担っていると感じました…!

そして、5話までの物語の積み重ねが最終話に繋がってきて、読み終える頃には面白さからの興奮なのか怖さからなのか分からない震えが出ていました。帯に書かれている「震えがやまない、読み終えてからが恐怖」というのは誇大広告ではありません…!

まとめ

ホラー小説にミステリーとリアリティを組み合わせた物語の構成から、普段1冊読み終わるまで数日かかる自分でも、この作品はすぐに読み終わってしまいました。

「次はどうなるの!?」と一気に読み進めるのですが、そんな読者へのトラップのように大どんでん返しが最終話で待ち構えています。最後まで読んだら、きっと読む前には戻れない。読み終わってからがまさに恐怖です。

さらに、書評の部分も怖い要素があり、最初から最後までホラーたっぷりの当作品。ホラー好きな方、ミステリー好きな方にオススメの作品です! 最後に、裏表紙にあるこの赤い染みは一体なんなんでしょうか…何か書かれているような…

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