半年前ぐらいだろうか、仕事の帰り道におじいさんに声をかけられた。
自分は歩くとき、必ずイヤホンで音楽を聴きながら歩いている。なので、必然的に声は聞こえない。だが、彼が手を振ったのが目に入り、イヤホンを外し足を止めた。
外見で人を判断するのはどうかと思うが、身なりが綺麗という訳ではなかった。もしかしたらホームレスなのかもしれない。
変な人に絡まれたかも…!と内心心臓バクバクさせながら、平静を装い「どうしましたか?」と前屈みになりながら聞いた。
すべて聞き取れた訳ではなかったが「帰郷したばかりだが、財布が入ったカバンが盗まれ、お金が無く困っている、数百円ほどくれないか?」という内容だったと思う。誰かに金を要求されるのは自分の人生上初の経験だった。
唐突な要求で面食らった自分は「いや…今持っていないです。」と答えた。
今になって思うと、そんなはずはない。オフィス街を歩く男が数百円すら持っていない訳がないのだ。現に自分もポケットに突っ込んだ手は財布を握りしめていた。
しかし、そのおじいさんはそれ以上ツッコむことはなかった。
自分は「すいません…」と言いながら、足早にその場を立ち去った。もしかしたらついてきているのでは?と内心怖かったが、駅に着いて振り向くと、その人はいなかった。
安堵した反面、「少しぐらい渡してもよかったのでは?」と良心の呵責?自己嫌悪?に苛まれる。
もしかしたら彼の話は本当で、とても困っていたのかもしれない。
「明日いたら渡そうか…」と思いつつ、その日は帰宅した。しかし、その日以降彼を見かける事はなかった。
そして、その出来事から数ヶ月経ったある日の帰り道、いつものように音楽を聴いて歩いていると、視界の中に伸ばされた腕が入った。
横を向くと、見覚えのある姿。そう、あの日のおじいさんだ。
まるでデジャヴのような展開に驚いていると、また数百円ほどくれないか?と言う。そして、語る内容も半年前と同じだ。もはや完全なデジャヴである。
おそらく、彼は以前に声をかけた人物とは別の人だと思っているのだろうが、自分はしっかり覚えている。いくらなんでも半年の間で二度同じ事が起きるなんてありえない。
「それ前も言ってませんでした?」と喉まで出かかったが押し込めた。
語る内容の真偽は置いておいて、騙されたような気分はやはりある。彼が半年前と同じことを言うなら、自分の回答も決まっていた。
「いや…今持っていないです。」
自分は歩くとき、必ずイヤホンで音楽を聴きながら歩いている。なので、必然的に声は聞こえない。だが、彼が手を振ったのが目に入り、イヤホンを外し足を止めた。
外見で人を判断するのはどうかと思うが、身なりが綺麗という訳ではなかった。もしかしたらホームレスなのかもしれない。
変な人に絡まれたかも…!と内心心臓バクバクさせながら、平静を装い「どうしましたか?」と前屈みになりながら聞いた。
すべて聞き取れた訳ではなかったが「帰郷したばかりだが、財布が入ったカバンが盗まれ、お金が無く困っている、数百円ほどくれないか?」という内容だったと思う。誰かに金を要求されるのは自分の人生上初の経験だった。
唐突な要求で面食らった自分は「いや…今持っていないです。」と答えた。
今になって思うと、そんなはずはない。オフィス街を歩く男が数百円すら持っていない訳がないのだ。現に自分もポケットに突っ込んだ手は財布を握りしめていた。
しかし、そのおじいさんはそれ以上ツッコむことはなかった。
自分は「すいません…」と言いながら、足早にその場を立ち去った。もしかしたらついてきているのでは?と内心怖かったが、駅に着いて振り向くと、その人はいなかった。
安堵した反面、「少しぐらい渡してもよかったのでは?」と良心の呵責?自己嫌悪?に苛まれる。
もしかしたら彼の話は本当で、とても困っていたのかもしれない。
「明日いたら渡そうか…」と思いつつ、その日は帰宅した。しかし、その日以降彼を見かける事はなかった。
そして、その出来事から数ヶ月経ったある日の帰り道、いつものように音楽を聴いて歩いていると、視界の中に伸ばされた腕が入った。
横を向くと、見覚えのある姿。そう、あの日のおじいさんだ。
まるでデジャヴのような展開に驚いていると、また数百円ほどくれないか?と言う。そして、語る内容も半年前と同じだ。もはや完全なデジャヴである。
おそらく、彼は以前に声をかけた人物とは別の人だと思っているのだろうが、自分はしっかり覚えている。いくらなんでも半年の間で二度同じ事が起きるなんてありえない。
「それ前も言ってませんでした?」と喉まで出かかったが押し込めた。
語る内容の真偽は置いておいて、騙されたような気分はやはりある。彼が半年前と同じことを言うなら、自分の回答も決まっていた。
「いや…今持っていないです。」
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