皆さんこんばんわ!とむとむでござる~!
今日は米澤穂信著『ボトルネック』の感想についてお話ししたいと思います~!!

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作品紹介

亡くなった恋人を追悼するため、東尋坊を訪れていたぼくは、何かに誘われれるように弾劾から墜落した…はずだった。ところが気が付くと見慣れた金沢の街にいる。 不可解な思いで自宅に戻ったぼくを迎えたのは、見知らぬ「姉」。 もしやここでは、ぼくは「生まれなかった」人間なのか。世界のすべてと折り合えず、自分に対して臆病。そんな「若さ」の影を描き切る、青春ミステリの金字塔。                            「ボトルネック」背表紙より引用

あらすじ

主人公「リョウ」は自殺した恋人の「ノゾミ」を弔うために、彼女が転落死した東尋坊を訪れる。 リョウの家庭は植物状態の兄、互いに嫌悪しあっている父と母と複雑な環境で、ノゾミの死の2年後にようやく弔いに訪れることができた。

しかし、到着した直後、彼に兄の死の知らせが届き、恋人の死の感傷に浸る間もなく、とんぼ返りの帰宅を余儀なくされる。 リョウは帰宅前にノゾミが転落したであろう場所を見つけ、手向けとして花を贈るが、同時に強風が吹き東尋坊の断崖から転落してしまう。

死を覚悟したリョウだったが、目を覚ますと金沢の街に戻っていると気づく。不可解な思いで自宅に戻ると、見知らぬ「姉」サキと名乗る人物が現れ、この世界がパラレルワールドであると知る。

さらに、この世界では、兄は生きており、両親の関係も良好。更に、死んだはずの恋人ノゾミが幸せそうに暮らしているなど、自身のいる世界よりも皆が幸せに暮らしていることに気づき…

感想

①パラレルワールド
まず序盤から主人公が崖から転落し、死んだと思ったらパラレルワールドに流れ着いたという展開。転生系とかにありがち展開だけど、この作品はひたすら重い。

この「リョウ」という主人公も、自分に臆病で、世界に絶望している人物なんですよね。そして、パラレルワールドの経験を通して、自分に自信を持ったり、何か変わるきっかけが掴めたりするのかな~と思いながら読んでいると、そんな事はない。

自分が生まれなかった世界は、自身の世界よりも皆が幸せという残酷な結果をひたすら突きつけられていくという酷な展開。 作中で度々「黒々とした雲」や「灰色の空」と暗い空模様が描かれていたけど、この空模様通りに内容もなかなか暗い陰鬱な印象を受けました。

②ミステリー
パラレルワールドだけでも十分面白いけど、それに「ミステリー」要素が加わったのが当作の面白い所。 「姉」のサキから出される、サキの世界とリョウの世界のどこが違っているのを調べる「間違い探し」。

なぜ、2つの世界は違ってしまったのか?という理由が明かされていくのも面白い所です。 個人的に見所なのが、恋人のノゾミの性格がリョウの世界では「感情の起伏が乏しく、無気力そうな性格」だったのに対し、サキの世界では「天真爛漫かつ傍若無人」と、正反対の性格をしている所。

けど、コレが実は物語の伏線になっているんですよね…! 特に、リョウとサキが東尋坊に向かう中の会話シーンは、今までの謎が紐解かれていく感じがあってめちゃくちゃ面白いです。その中で、ノゾミは本当に自殺だったのか?という新たな謎もまた生まれ始めて…!

考察

以下ネタバレ注意!!

ラストのリョウの結末なんですが「自殺説」と「生存説」、両方があり得そうな結末になっています。 けど、自分的には「自殺説」が濃厚なんじゃないかとも思っているんですが、まずはキーワードになる作品のタイトルの解説から。

まずこの作品のタイトル「ボトルネック」の意味なんですが、作中ではこのように解説されています。
【ボトルネック】瓶の首は細くなっていて、水の流れを妨げる。そこから、システム全体の効率を上げる場合の妨げとなる部分のことをボトルネックと呼ぶ。全体の向上のためには、まずボトルネックを排除しなければならない。
ノゾミの死の真相や、なぜ2つの世界で性格が違っているのか、また「間違い探し」の原因に気づき、自身こそが「ボトルネック」だったと知り絶望するリョウ。

すべてに絶望した彼が「もう死にたい」と思った矢先、パラレルワールドから現実世界へ呼び戻されます。

サキの世界を見せられた上で、現実世界に戻ってきたリョウは、「ボトルネックを排除するため」自殺を覚悟しますが、サキと思われる女性からの着信で、ほんの少しだけ生きる希望を抱きます。

しかし、その直後母からの「二度と帰ってこなくて構いません」という非情なメールが届き、このメールを見てリョウがうっすらと笑う所で物語の幕は閉じます。

「生きる希望」を持った矢先に、母からの非情なメール。おそらく、このメールでリョウの「生きる希望」は打ち砕かれて、諦めの笑みを浮かべたのではないかなぁ。と考察しています。

まとめ

最後まで陰鬱とした空気の中幕を閉じた当作。主人公のリョウは高校生。このぐらいの年って「自分じゃなければ」とか、「自分なんかいなければよかった」って思ってしまう時が度々ある時期ですよね。

漫画やアニメとかでも、「自分なんかいなければよかった。」と思う主人公は多いけど、彼らって最終的には立ち直ることが多い。

けど、この作品のリョウは最後の最後まで「自分」に対する希望を持てなかったという珍しい展開で、特に最後の結末は予想を見事に裏切られました。

ミステリー要素もめちゃくちゃ面白く、「間違い探しの」答えや理由をすぐには出さないことで、リョウと同じく「想像」し楽しむことができます。

ミステリーの内容面白いなと思っていたら、作者の米澤穂信先生は「氷菓(古典部シリーズ)」でも有名でしたね!(まだ読んでない)

今回の「ボトルネック」が良いとっかかりになった気がするので、このまま「氷菓」も見てみたいと思います~!ここまでお読み頂き、ありがとうございました!!