とむとむダイアリー

オタクの何気ない日常エッセイ。

タグ:台風

「え!?台風なのに出勤するんですか!?」
職場からの突然の電話に自分は驚いたが、一応社会人なのでこの言葉をぐっと飲み込んだ。この時、沖縄には台風が迫っており、直撃する日が自分の出勤日と被っていたのだ。

「その次の日も出勤だから、近くのホテルに泊まれるけどどうする?」
自分は上司の提案を承諾した、というより、その選択肢しかなかった。自分が帰る時刻は台風がちょうど到来し始める頃。その頃にはきっとモノレールも止まっているだろう。タクシーで帰るという選択肢もあるが、市を跨いでいるので後日清算してくれたとしても金額がえげつないことになる。だとすればホテルに泊まるのが1番ベストだろう。

などと言いつつも、内心では「ホテルに泊まれる」という非日常なイベントに密かに胸を高鳴らせており、仕事を終えた後にはコンビニでつまみやお酒を買い込んでプチ酒盛りをしようなんて思いながら、仕事へ向かった。

その日の午前中はいわゆる”嵐の前の静けさ”というやつで、いい天気だったのだが夕方になると徐々に風が強くなり始めた。それと同時に、座っている自分の視界がまるで頭を左右に振っているかのように揺れ始める。
「今揺れませんでしたか?」
「やっぱり揺れましたよね!風でビルって揺れるんですね~」
「タワマン住んでる人は台風の時めっちゃしんどいらしいですよ」
どうやらこの現象は眩暈ではなくビルの揺れらしい。そして、時間が経つにつれてこの揺れはさらに悪化していった。

それでも時間は経つもので、なんとか終業時刻になり自分は足早にコンビニへと向かった。ようやくお楽しみタイムがやってきたのだ。しかし、自分の希望はあっさりと打ち砕かれる。なんとコンビニが台風のせいで閉まっていたのだ。当然と言えば当然なのだが、それでも落胆してしまう。

仕方ないと思いつつホテルへ向かおうとしたその時、外は信じられないほどの暴風が吹き荒れていた。ビルから出たばかりの自分としてはまるで異世界に放り込まれたかのようで、一瞬パニックになる。
ちなみに、ビルからホテルまでの距離は数十メートル。時間にしたら1分未満で着くだろう。それでも外に出ることに恐怖を感じざるを得なかった。

しかし、いつまでもビルにはいられない。自分は呼吸を整え一気にホテルへ向かおうと決意し再びビルを出ると、ちょうどその時ビルの壁に手を当てながらゆっくりと移動する同僚を見かけた。

「大丈夫ですかー!!」
「なんとか!気を抜いたら飛ばされそうになりますねー!」

風の音が大きいので会話すら一苦労だ。
「一緒に行きますか?」とジェスチャーで伝えるが、同僚は「先にどうぞ」と首を横に振った。こういう時は自分自身のタイミングで行きたいという気持ちはなんとなく分かる気がする。

その後、ホテルへ向かおうと小走りを始めた時、背後から猛烈な突風が吹き、自分の体は意思に反してなぜか全力疾走を始めた。風の力も加わり、50m走以上のスピードが出ていたと思う。

スピードがピークに達した時、自分の目の前にはホテルのガラス面が待ち構えていた。だが、風が体を押しているため踏みとどまることができない。このままだとノーブレーキで正面からガラス面に激突する。激突するだけならいいが、この勢いなので衝突の際にガラスを割れてしまうかもしれない。
そうなれば大怪我、いや死ぬ可能性だって考えられる。「死」を予感するも体はいうことを聞かずに減速すらできない。

距離があと1~2mになった時、バランスを崩したのか無意識の防衛反応が働いたのか、自分は転ぶことでガラス面への衝突を回避できた。横向きに転んだので、幸い腕で受け身も取れている。起き上がり周囲を見渡すと、自分の無様な一部始終を目撃した人は誰もいなかったようで少しほっとする。

「し、死ぬかと思った…とりあえずホテル入ろう」
ホテルでチェックインを済ませ部屋に入ると、疲労と安堵が押し寄せてきたと同時に、アドレナリンが切れたのか、受け身をとった時の腕と脚が痛みを訴えてきた。
運が良かったのか傷は手のひらの小さない擦り傷のみだったが、手首の辺りがズキズキと痛み、力を入れることができない。

風呂に入りながら先ほどの出来事を振り返ってみたが「台風で転倒」の原因がなんとなくわかった気がする。もし強風で足を取られ走り出してしまった場合、止まる方法はぶつかるか転ぶしかないのだ。もしかしたら、今までの負傷者の中には自分と同じケースもあるのかもしれない。

それでも、大きな怪我もなくホテルへ辿り着けたことは運が良かったと言うほかないだろう。ちなみに、この記事を投稿する本日も手首の痛みは続いている。

台風が明日、沖縄に寄ってくる。沖縄は台風がよく来るから、こういうと不謹慎かもしれないが、少し台風慣れしてると思う。

今日の帰り、TSUTAYAに寄ってきたが、レンタルDVDを借りる多くの客で賑わっていたし、ドンキには非常時に備えてる人もいると思うが、酒やツマミ、食料を買い込んでいる人も多かった。
ちなみに、自分もその内の1人だ。←

そして、台風の時に皆が気にするのは「暴風警報が発令されるか?」だ。警報が発令されれば学校は休校だし、休みにする企業もある。コンビニやスーパーが閉店している時もある(当たり前)

ちなみに沖縄には「台風で地元スーパー”ユニオン”が閉まったらヤバい。」と謎の基準がある。「今開いてます!!ユニオンですから!!!」をコマーシャルで言ってる手前、閉店にできないのかもしれない。たまに自分たちも追加の食料を買いに来ることがある。
ユニオンの皆様、いつもほんとありがとうございます…ッ(圧倒的感謝)

台風前夜に強くなる風で窓や戸が揺れたり、スマホから避難メールの音が鳴り響いたり、空が紫色になったりすると、徐々に台風が近づいているのを感じる。

沖縄は住宅が基本鉄筋コンクリートなので、家に籠っていれば基本安全だ。その外の喧騒を聞きながらエアコンガンガンにし毛布にくるまって眠る夜はあまり嫌いではない。

ちなみに、自分は明日出勤予定だが、暴風警報が発令され公共交通機関がストップすると自宅待機になるらしい。

正直、暴風で無くてもこんな悪天候の中仕事には行きたくないので、休みになることを祈り、最小限の被害になることを祈るばかりである。

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